「コミュニティとQOL」         杉原 茂樹(ヘルパー・介護福祉士)

                  

 18年前に芦屋川の上流で拾った木の枝で作ったフリー・あ・ステージの看板は朽ちた枝もあり色褪せてきていました。                          設立19年目を迎えるにあたり、綺麗に磨き直し、新しい枝も加えて看板をリニューアルしました。

仕事柄、コミュニティについてよく考えます。                    コミュニティの質がその人のQOLの質に直結すると思っているからです。       つまり人間関係や他者(人以外も)との関係性がその人の幸福に直結する、       人はコミュニティに属して活動する生き物であるからという認識がありました。

先般、京都大学元総長の山極寿一さんのゴリラの研究のお話を聞く機会がありました。素敵なお話なのでシェアさせていただきます。                    それは、食物を分け合う行動をするゴリラの話です。

ゴリラには、分けて欲しいと手を出すと、手を出された個体は獲得した食べ物を分け   与える習性があるということです。                           ゴリラは人に凄く近い生物種です。                        進化の過程で、人とゴリラが分化する前から、人属はすでに食物分配するコミュニティを形成していたという事実を知りました。

人は、進化し精神性が向上したから、                       脳が大きくなったから、                              食物を分け合うようになったのではなく、                     進化の過程で                                     すでに700万年も前から                                   食物を分け合うことが当たり前だとする性質(進化上の)を持っていたのでした。

そして、興味深いのは                               人は二足歩行することで、両手が使えるようになり、遠くで獲物(食べ物)を得ても    そこで食べてしまうのでなく、仲間(コミュニティ)のもとに食物を持ち帰って共に     食べる種に進化していったということです。

シベリアで活動していた写真家の星野道夫さんの著作のなかで             鯨漁をするイヌイットの描写がありました。                                 北極の海で仕留めた鯨を沖から浜に運んで帰る人たち、               それを浜で待つ人たち                               その神聖な食べ物を分けあう人たちの歓喜の景色がありました。                  星野さんは今日の分け前を喜ぶ老婆の姿をスケッチしていました。                今日は鯨を食べれる!                                                共に生きるコミュニティがそこにありました。

福祉とは富の再分配であると定義されていたように思います。

果たして、改めて再分配をする必要のない世界に                    私たちは少なくとも700万年も生きていたという事実に感動したのでした。